10年前

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「太一君の言葉は…やっぱり私らとはちがうんねぇ」 引きずられるように離れて行く太一君を見て、口を開く。 初めて会った時から、太一君は標準語をしゃべっていた。 聞き慣れん言葉だけど、そのうちこっちの方言を話すだろうと思っていたが… 一年経った今でも、話す言葉は標準語だった。 「太一はどっから来たんやろか」 「…どういう意味ね?」 「太一は…私の本当の弟やない。この前、学校で習ったろ?  赤ちゃんは母親のお腹で育つって…」 えっちゃんの言いたい事は分かる。 この前授業で、赤ちゃんという存在や育ち方を習ったのだ。 写真で見る赤ちゃんは小さくて、柔らかそうだった。 それから、赤ちゃんがお腹におる女の人の事を妊婦と呼んで、そのお腹は大きくふくらむと。 籠女村には妊婦も赤ちゃんも、一人もいない。 見た事もない。 そもそも、子供はいきなりどこかからやってくる。 そんなもんなんだとさえ思っていた。 だから授業でその話を聞いた時、クラス中がざわつくくらい騒がしくなった。
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