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「太一君の言葉は…やっぱり私らとはちがうんねぇ」
引きずられるように離れて行く太一君を見て、口を開く。
初めて会った時から、太一君は標準語をしゃべっていた。
聞き慣れん言葉だけど、そのうちこっちの方言を話すだろうと思っていたが…
一年経った今でも、話す言葉は標準語だった。
「太一はどっから来たんやろか」
「…どういう意味ね?」
「太一は…私の本当の弟やない。この前、学校で習ったろ?
赤ちゃんは母親のお腹で育つって…」
えっちゃんの言いたい事は分かる。
この前授業で、赤ちゃんという存在や育ち方を習ったのだ。
写真で見る赤ちゃんは小さくて、柔らかそうだった。
それから、赤ちゃんがお腹におる女の人の事を妊婦と呼んで、そのお腹は大きくふくらむと。
籠女村には妊婦も赤ちゃんも、一人もいない。
見た事もない。
そもそも、子供はいきなりどこかからやってくる。
そんなもんなんだとさえ思っていた。
だから授業でその話を聞いた時、クラス中がざわつくくらい騒がしくなった。
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