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籠女村の奇妙な事の一つ目が赤ん坊の事だとしたら、二つ目はお葬式だった。
この村では年に何度かお葬式が行われる。
一番多いのが老人だとしたら、二番目に多いのは18歳から20歳の若者だ。
私が中二の夏、隣の吾郎兄ちゃんが帰ってこなくなった。
吾郎兄ちゃんとは五歳離れているけど、家が隣りな事もあって結構仲が良かったから。
高校を卒業して、隣町の大学へ行く為に一人暮らしをすると、引っ越し作業を手伝わされた。
一か月に一度は必ず帰って来るようにと無理矢理約束をさせられたって、ちょっと不満げに話してたっけ。
それでも四月になる少し前、楽しそうにこの村を出て行った。
それが凄く羨ましかったけど、大人たちは少し反応が違って見える。
出て行ってから明らかに吾郎兄ちゃんの話題が増えたし、4月の半ばに帰って来た時の喜びようったらなかった。
何がそんなに嬉しいのかは分からなかったけど、吾郎兄ちゃんは私へ煎餅と、隣り町での生活の土産話をしてくれた。
この村しか知らない私には夢のような話で、吾郎兄ちゃんがキラキラして見えていたんだ…
この時は…。
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