10年前

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「ばっちゃん、ただいまー!  えっちゃん家さ行ってくるー」 開けっ放しの玄関へ、ランドセルを投げ放つ。 台所にいるだろう、ばっちゃんに声を掛けてから、返事を聞く間もなく外へ飛び出た。 家を出ればすれ違う皆が 「吉川んとこの美弥ちゃん、おがえり。  あんま走って転げんようにしなよー」 と口々に声を掛けてくれる。 だから私も 「トシのばぁちゃんももう歳やけぇ、気ぃ付けやー」 なんて走りながら返す。 この村は皆知り合いで、仲間意識が強かった。 学校を遅刻しただけで、その日の帰りには何でか村中に知れ渡っている。 この村しか知らない私は、これが普通で当たり前だと思っていた。 それでも、ある程度大きくなった頃から… 不思議に思うことが多くなった
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