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「ほんに美弥はすばしっこいんなぁ」
「それだけが私の自慢できるとこやがんね」
大きい桜の木の陰で、ばっちゃんの作ったお弁当を食べる私。
ばっちゃんは私がリレーのアンカーで、一人抜いて一着を取った事が嬉しいと、ニコニコと笑顔を浮かべている。
「それより…しんどーないかいね?
見とう間ずっと立ちっぱなしじゃろ?」
「何言うとんが。
ばっちゃん来んかったら誰が来るんじゃ」
私の心配も何のその。
楽しそうにばっちゃんが笑った。
周りを見回せば、皆家族とお弁当を広げている。
が、私の隣にはばっちゃんしかいない。
物心のついた頃には、もう私の両親はいなかった。
話によると、お母さんは私を産んだ時に死んだらしい。
お父さんも同時期に死んだと聞いた。
顔も声も、何もしらないから。
薄情かもしれないが…今まで寂しい思いはせずに生きてこれた。
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