10年前

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「ほんに美弥はすばしっこいんなぁ」 「それだけが私の自慢できるとこやがんね」 大きい桜の木の陰で、ばっちゃんの作ったお弁当を食べる私。 ばっちゃんは私がリレーのアンカーで、一人抜いて一着を取った事が嬉しいと、ニコニコと笑顔を浮かべている。 「それより…しんどーないかいね?  見とう間ずっと立ちっぱなしじゃろ?」 「何言うとんが。  ばっちゃん来んかったら誰が来るんじゃ」 私の心配も何のその。 楽しそうにばっちゃんが笑った。 周りを見回せば、皆家族とお弁当を広げている。 が、私の隣にはばっちゃんしかいない。 物心のついた頃には、もう私の両親はいなかった。 話によると、お母さんは私を産んだ時に死んだらしい。 お父さんも同時期に死んだと聞いた。 顔も声も、何もしらないから。 薄情かもしれないが…今まで寂しい思いはせずに生きてこれた。
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