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幸せすぎて怖い、という言葉を聞いたことがある。
これは今があまりにも幸せだから、次にもしかしたら不幸なことが起こるんじゃないかという自慢と不安が一緒になった意味だと思う。
ようは、今現在すごく幸せだから出る言葉なのだ。
しかし言葉の悪用をする奴はいる。
「あーもう俺、次はすっげー悪いことが起きる気がするんだよ」
目の前で深々と暗く重たい息を吐き出したこの男だ。
不幸体質というか、自ら不運を呼び寄せようとするこいつ。
「幸せが怖い。絶対に何か悪いことが起きる。絶対!」
26才のいい大人が、居酒屋でビール片手に陰陰滅滅と不運を招こうとしている。
眉はキリッとしているのに大きめの目は少しタレていて、見るからに優しそうな男。
顎のラインはシャープではなく少し丸い。
でもデブじゃないし、体だって鍛えてる(らしい)。
中学・高校は球児で野球三昧だった上に、何を間違ったのか大学ではテニスとラグビーのサークルを掛け持ちしていたそうだ。
だからなのかフットワークも軽いし頼まれごとも引き受けまくり。
その恩恵なのか、社内外で妙に人脈だけはある。
たぶん人生では要領が悪く損をして生きてくタイプ。
顔だってイケメンではないけれど悪くはない。
性格も穏やかで女性に可愛がられるタイプだろう。
ただし、弱点がいくつかある。
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