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幻覚でなければ、青空に大きく丸い月が浮かんで見える。それもうっすらと蒼い光を帯びているように見えて、なんだかとっても幻想的だった。
美紗:「えっ?昼間なのに?」
美優の視線を辿ってきょとんとしながら声を上げる姉。
美優:「綺麗..」
この異常な光景にも関わらず、その月に見とれる美優。対する姉は、「ぇ、な、何?これ..?」と珍しくも一般的な反応。月と、それを見つめる美優を交互に見つめている。
美優が視線を姉に移すと目が合い、同時に首を傾げ合う。
美優:「ぁ、月が..」
美紗:「一体どーなってるの?(パクッ)」
再び視線を月のあった位置に戻すと、そこにあったはずの大きな蒼い月は跡形もなく消え去っていた。
美紗:「あれ?確かにあそこにあったよね?(モグモグ)」
一生懸命パフェを口に運びながら器用に喋っている。
美優:「消えた..の?って、よくこんな状況下でパフェなんて食べていられるわね」
姉に振り返り、既にコーンフレークの部分まで減っているそれを見て、さっきまでの不思議な現象すら忘れかけてしまう。
美紗:「だぁってぇ、お腹減ってお腹減って」
スプーンを空中でクルクルとさせながらおどけている姉をみていると、本当にさっきの出来事が夢のように思えてくるから不思議だ。
美優は、「もぅっ..」と軽くため息をついてさっきの月があった位置を再び眺めてみる。やはりそこには青い空と、ちらちらと泳ぐ白い雲があるだけ。まるで、初めから何も無かったかのように…。
周りを見ても、どうやらそれに気付いた人は居ないみたいだった。
美優:「何か、おかしいよ..」
呟いて姉に視線を戻すと、既にパフェを食べ終えてウーロン茶のストローに口を付けているところだった。
美紗:「ん?何が?」
美優:「うん、もういいよ。なんでもない..」
なんだか、本当にどうでも良くなってきた美優はようやくスプーンに手をかけた。
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