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日の暮れかかる頃、美紗と美優は二人並んで帰路についていた。ふと美優が、「あの月、何だったのかな..」と小さく呟いた。
すると、「ぁーそう言えば!」といった様子で、しかしさして気にした様子でもなく返事を返してくる。
美紗:「何だったのかな~。まぁ、みゅうなら頭良いからなんとなく分かるんじゃない?」
その言葉に、「いやいや」と首を振る。この姉は妹の事を博士か何かと勘違いしてはいないだろうか…。
美優:「普通に考えてあんなの分かるわけないじゃない..。月がいきなり出てきていきなり消えるなんて..」
美優の言葉に、「んん~」と考え込むしぐさをして見せる姉。
美紗:「てゆーかあれ、ホントに月だったのかな?」
美優:「え..?」
思わず立ち止まり、姉に視線を向ける。
美紗:「だって、ほら。あそこに浮いてる月とさっきの月、同じように思えない」
美紗はピッと空に指をさす。そこには小さな三日月がうっすらと見えはじめていた。
美優:「ん、確かに」
美紗は、「帰ってお母さんにでも聞いてみよう」と言いながら再び歩き、美優は「あのママじゃ、アテにならなそうだけど..」と苦笑いしながらそれについていく。
美紗:「あぁ~そうかもねっ!」
振り返りケタケタと笑う姉。その様子を見て美優は軽くため息をつく。
美優:「…お姉ちゃんもなかなか人の事言えないからね..?」
その言葉に美紗は、「これでも、いざという時は"役に立つ"お姉ちゃんなんだからねっ」と言い返してくる。それに対して、「どこかの便利アイテムじゃないんだから」と言って笑い出す美優。
家に着くまでこのたわいない会話は続いた。
くだらない事を言い合って、笑い合って..こんな絵に描いたような幸せな日々はいつまでも続くと思っていた。
この頃の私達はまだ、"絶望"と言うものを知らなかった…。
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