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美紗:「最近、曇りの日続いてるねー」
憂鬱な天気の空を見上げながらお姉ちゃんがポツリと呟いた。
ここ3日、毎日雨が降り続いている。
美優:「なんだか、蕾も元気ないね..」
幸い、強化ガラスに囲まれたガーデンハウスになっていて、雨風の影響は受けないようになっているのだけど..太陽の代わりまでは無かった。
萎れがちな蕾を眺めながら二人でそれをじぃっと見守っていると、後ろから足音が近付いてきた。
柚羽:「最終手段よっ」
そう言いながら突き出した両手には、無数のてるてる坊主がぶら下がっていた。
柚羽:「みゅうは西側、みしゃは東をお願い」
言いながらてるてる坊主を幾つか手渡されて、私達はそれを吊るしに行く。
遠くから、「雨雲なんてどっか行ってしまえー!」とお姉ちゃんの叫ぶ声が聞こえた。…同時に雨音が増したような気がする。
柚羽:「そんな乱暴な言い方じゃ、雨雲を怒らせてしまうわ。もっと優しく言わなきゃ」
吊るし終えて戻ったゆずはお姉ちゃんにダメ出しをしている。
美紗:「優しく..なら、みゅうがお願いしてみたら?」
そう言っていきなり私に振ってくる姉。まるで最適だと言わんばかりに瞳を輝かせて見つめてきた。
美優:「ぇ..私が?」
恥ずかしくて嫌だと言おうとしたけど、ゆずにも「みゅうなら行けるわ!頑張って」と促されて、何故か祈祷ごっこに発展してしまった。
座り込んで両手を組み、お祈りのポーズ。
美優:「雨雲さん..雨雲さん..」
そんな私を後ろからじぃっと二人が見つめてくる。
美優:「やっぱり恥ずかしいよぅ~..」
そう言ってうなだれる私を、二人は励ましてくる。
柚羽:「お願い、みゅう。花の命がかかってるのよ..」
ゆずはそう言いながら私の隣に座り込み、同じくお祈りのポーズをとる。すぐにお姉ちゃんもその後に続いた。
「雨雲さん、雨雲さん..」と声を揃えて呟きながら、必死にお祈りをしても現状は変わることは無く、相変わらず雨は続いていた。
柚羽:「もう少し、もう少しなのに..」
大きく膨らんだまま時間が止まってしまった蕾を見つめながら、ゆずは「ふぅっ」と小さくため息を漏らした。
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