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日の暮れかかる頃、私達3人はじぃっと蕾を見つめ続ける。
蕾は以前よりも更に膨らみを増していて、窮屈そうにその先から白い花弁を覗かせている。
私達は同じ様にはち切れそうなほどに胸を膨らませながら見つめ続けた。
ゆずはスケッチブックを取り出してその姿を絵に納めている。
美優:「今にも咲きそうな感じ..」
柚羽:「あと3時間もすれば、綺麗に咲いてくれるはずよ」
美紗:「3時間!?長いよ~」
腕時計を見ながらお姉ちゃんは待ちきれないといった感じでそわそわしている。
柚羽:「今まで焦らされた時間を考えたら、3時間なんてあっという間よ」
言いながら慣れた手付きで筆を走らせるゆず。
美優:「本当に上手に描くよね..ゆず」
スケッチブックを覗いてみると、繊細なタッチで綺麗にそれは描かれていた。
美紗:「ホント、将来画家にでもなれそうだよね」
ゆずの後ろに回ってスケッチブックを覗きこむ。
柚羽:「そんなにまじまじと見られると緊張するわ..」
そんな私達を横目に、ゆずは恥ずかしそうに顔をほんのり赤らめてスケッチブックを両手で覆う。
そんな感じにお喋りを続けていると、3時間という時間は短く過ぎ去っていった。
お姉ちゃんは眠そうに首をコクリコクリとさせている。
綺麗な満月の灯りがガーデンを幻想的に照らしている。
脇には、ゆずが満開の花を描こうと開かれたスケッチブックが未だに真っ白なまま置かれていた。
その花は1時間前から咲きかけで止まってしまっていたのだ。
柚羽:「やっぱり、あの悪天候が響いているのかしら..」
美優:「そんな、ここまで頑張ったのに..」
時刻は22時を回っていた。眠そうなお姉ちゃんを揺さぶりながら、私達は期待を込めてその花を見つめ続けた。
そして、もうすぐ日付も変わろうとした頃。
柚羽:「みしゃ、寝ちゃったわよ」
そう言いながら、ゆずは静かに寝息をたてるお姉ちゃんの頭を優しく撫でる。
花は相変わらず、時間が止まってしまったかのように咲きかけのままだった。
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