8人が本棚に入れています
本棚に追加
美優:「諦めちゃダメ..。今度は、恥ずかしがらないでちゃんとお祈りするから..だから、お願い...!」
私は手を組んで、すがるような想いを込めて祈った。
柚羽:「みゅう..」
続いてゆずも同じく手を組んで祈り始めた。
瞳をぎゅっと閉じて、必死に祈った。すると、今までの想い出が脳裏に浮かんでくる。
気付くと頬に涙が伝ってた。
美優:「お願い..お願いだよぉ..」
瞬間、ほんのり暖かいものが私達を包み込んだような気がした。
美紗:「みゅう、ゆずっち..花が...」
いつの間にか目を覚ましたお姉ちゃんに声をかけられて、閉じていた瞳を開ける。
柚羽:「…花、が..」
隣に居るゆずも驚きに目を見開いていた。
目の前には、力いっぱい大きく開かれた花が月の灯りを帯びてほんのり蒼く、幻想的に輝いていた。
美優:「咲いた..」
同時に私の瞳から涙が溢れた。
私達は喜びに涙を流しながら抱き合った。
蒼く暖かな月の灯りに包まれながら…。
ゆずは急いで筆を取ってスケッチブックに向かい合った。
私とお姉ちゃんは安心感と泣き疲れたせいか、気付くと眠ってしまっていた。
そして翌日、眩しい日射しに当てられて目を覚ますと、花の前に座り込むゆずの後ろ姿が視界に入る。
美優:「ゆず..?」
声をかけると、ゆずは笑顔で振り向く。目元には涙の跡が残っていた。
柚羽:「おはよう、みゅう。もしかして起こしちゃったかしら?」
美優:「ううん、私、いつの間に寝ちゃってたんだろ..」
まだしぱしぱする目を擦りながら、ゆずの隣に座って花を眺めてみる。
美優:「ぁ...」
その花は力無く萎れ、無惨な形で枯れかけていた。
まるで、昨日の事が夢だったのかと錯覚してしまう。
柚羽:「月下美人」
美優:「え?」
柚羽:「この花の名前よ。月の下に美しく咲く花」
ゆずはそう言いながらスケッチブックを取り出して、それを見せてくれた。
そこには昨日見た、蒼く輝く美しい花がその姿のまま残っていた。
美優:「やっぱり、画家になれるね」
ゆずの描く絵にはいつも見とれてしまう。
柚羽:「みゅうのおかげよ。…ありがとう」
うっすらと頬を赤らめながら呟くゆず。
私達は暖かな日射しの中、枯れかけた花を見つめ続けた。
一夜限りの、美しくも儚い私達の花を…。
Episode:若月美優 fin.
最初のコメントを投稿しよう!