Episode 若月美優

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美優:「諦めちゃダメ..。今度は、恥ずかしがらないでちゃんとお祈りするから..だから、お願い...!」  私は手を組んで、すがるような想いを込めて祈った。 柚羽:「みゅう..」  続いてゆずも同じく手を組んで祈り始めた。  瞳をぎゅっと閉じて、必死に祈った。すると、今までの想い出が脳裏に浮かんでくる。  気付くと頬に涙が伝ってた。 美優:「お願い..お願いだよぉ..」  瞬間、ほんのり暖かいものが私達を包み込んだような気がした。 美紗:「みゅう、ゆずっち..花が...」  いつの間にか目を覚ましたお姉ちゃんに声をかけられて、閉じていた瞳を開ける。 柚羽:「…花、が..」  隣に居るゆずも驚きに目を見開いていた。  目の前には、力いっぱい大きく開かれた花が月の灯りを帯びてほんのり蒼く、幻想的に輝いていた。 美優:「咲いた..」  同時に私の瞳から涙が溢れた。  私達は喜びに涙を流しながら抱き合った。  蒼く暖かな月の灯りに包まれながら…。  ゆずは急いで筆を取ってスケッチブックに向かい合った。  私とお姉ちゃんは安心感と泣き疲れたせいか、気付くと眠ってしまっていた。  そして翌日、眩しい日射しに当てられて目を覚ますと、花の前に座り込むゆずの後ろ姿が視界に入る。 美優:「ゆず..?」  声をかけると、ゆずは笑顔で振り向く。目元には涙の跡が残っていた。 柚羽:「おはよう、みゅう。もしかして起こしちゃったかしら?」 美優:「ううん、私、いつの間に寝ちゃってたんだろ..」  まだしぱしぱする目を擦りながら、ゆずの隣に座って花を眺めてみる。 美優:「ぁ...」  その花は力無く萎れ、無惨な形で枯れかけていた。  まるで、昨日の事が夢だったのかと錯覚してしまう。 柚羽:「月下美人」 美優:「え?」 柚羽:「この花の名前よ。月の下に美しく咲く花」  ゆずはそう言いながらスケッチブックを取り出して、それを見せてくれた。  そこには昨日見た、蒼く輝く美しい花がその姿のまま残っていた。 美優:「やっぱり、画家になれるね」  ゆずの描く絵にはいつも見とれてしまう。 柚羽:「みゅうのおかげよ。…ありがとう」  うっすらと頬を赤らめながら呟くゆず。  私達は暖かな日射しの中、枯れかけた花を見つめ続けた。  一夜限りの、美しくも儚い私達の花を…。 Episode:若月美優 fin.image=471804457.jpg
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