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美優:「もう着いたよっ」
言わなければ本当にどこまでも行ってしまいそうな気がして、慌てて制止をかけた。
美紗:「ありっ?」
目の前に広がるは、ありふれたシンプルな一軒家。表札には「若月」の文字。
美紗:「ぇ、えへ」
美優:「ふふっ」
朝から究極の空回りを発揮する姉に呆れながらも、なんだか可笑しくなって笑ってしまった。
切れた息を整えつつ玄関ドアを開けて帰宅する二人。
美紗&美優:「ただいまぁ」
奥から急ぎ足で母が迎えに来た。
林檎:「ぉ、お帰りなさい。早かったわね..美優、ご苦労様(汗」
苦笑いを浮かべながら労ってくる。夕飯は好きなモノを作ってもらおうと密かに心に決めながら、軽く文句を言ってやる。
美優:「ママ、曜日くらい忘れないでよね..」
すると苦笑いの表情は更に苦味を増していく。夕飯いただき。
林檎:「ぁ、あはは..」
この家庭、ある意味美優が中心に成り立っているのでしょう
美優:「お姉ちゃんもっ!」
さも自分は悪くないといった顔で平然としている姉にも一喝。
美紗:「ぅ、はぁい..」
若干小さくなる姉。姉妹逆転。いや、双子だから、どちらが姉で妹かなんてあまり関係無い気もするような。
林檎:「まぁ、とりあえず着替えてらっしゃい」
気を取り直して母が言葉を発する。
美紗:「はーい」
軽く返事をしながら、トコトコと自分の部屋に向かう美紗。美優はその後を追い掛けながら、姉を呼び止める。今日の元々の用事を伝えるために。
美優:「ね、後で買い物付き合ってくれない?」
美紗:「ん、おっけぇい」
二つ返事で部屋に入っていく姉を見届けた後、1階のリビングへと降りていく。朝食の酢豚は先程と量は変わらずにラップしてあった。母は椅子に座ってパンケーキを食べている…。
美優:「ママ..」
ジト目で呼び掛けると、「え、なに?」とこちらを振り向いた。さっきの姉の表情とデジャヴ。わざと狙っているわけじゃないよね…?
…しばらくして、着替え終えてリビングに降りた美紗は異様な光景を目にする。
美紗:「何してんの?」
美優が母の口に無理矢理酢豚を突っ込んでいる。
美優:「ほら、食べなきゃ勿体無いでしょー」
林檎:「み、みふぁ、ふぁふけへ~」
※訳:「美紗、助けて」
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