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爽快に晴れ渡る青空とは対照的に、地上は重苦しい雰囲気が漂っている。
とある学校の校庭に並ぶ生徒たち。彼らは列に並ぶ人数にばらつきはあるものの、前後左右に寸分の狂いもなく並んでいる。
正確な数までは分からないが、数百人という彼らの中に私語は疎か、制服を着崩している者は誰一人としていない。
漆黒の制服に、血のように紅い腕章がその場の物々しさを助長していた。
彼らの向かい側に立つ男は拡声器を構える。男もまた、生徒たちと同じように黒い制服を着ていた。しかし、生徒たちの制服とはデザインが異なっており、幾つかの記章が肩や腕についている。
拡声器で男が声を発しようとした瞬間、男の視線が列の右端に向けられた。
その視線の先には明らかに一列分の空きがあり――もちろんそれは生徒が詰め忘れた訳ではなく、故意に空けられているのだが――、男は深いため息を漏らす。
「レイデンめ……今月もか」
男は拡声器が音を拾うことがないよう、横を向いてそう呟いた。その声には呆れと怒りが滲んでいる。
それらの感情を振り払うかのように首を振ると、男は拡声器を構え直した。
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