愛のままにわがままに

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「ジンがどうか人型になれますように」 ……魔界の住人が、それもいずれは魔王の後を継ごうという立場の女が、よくも神頼みなどと。 「そのためならなんでもします」 ちょっと待て。 何でもって、何だ。 「願いを叶えるのに見返りを求めるたぁ、ずいぶんセコい神だな」 「ちょっとっ!神様の悪口言わないの!」 想いが通じてから、お嬢はよくこうして【神サマ】に祈るようになった。 だが残念ながら。 祈って願いが叶うくらいなら、俺はとっくに人型になれている。 何年も何年も――、お嬢が俺に振り向くよりもずっと前から、それこそ気の遠くなるくらい長いこと、俺はそれだけを願ってきたのだから。 「神様、ジンの言葉を訂正します!」 必死で謝罪するお嬢のちょっとばかし脳ミソが足りない辺りも可愛くてしょうがない俺は、結構重症。 「どうせ叶わねぇよ」 「ジン!信仰がなければ祈りは伝わらないのよ!」 それまた、随分とセコい神サマで。 俺の【信じない】根拠など、どうでもいいってか。 「どうせ応えてくれねぇ神サマなんかより、俺と話そうぜ」 お前の声に耳を傾けるのも、お前の願いを叶えるのも、俺だけでいい。 他の誰も、いらない。 神サマにまでつまらない嫉妬をくすぶらせた俺を、お嬢は可笑しそうに笑った。 そうやって、笑っていろ。 小さなコトなど――、型の違いなど忘れて。 ずっと笑っていろ。 俺の、隣で。
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