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ある日突然どこぞの勇者が乗り込んできて、魔王――お嬢の父親を殺した。
お嬢付きになって以来いつか来るだろうと思っていたその日は、いとも簡単に訪れた。
初めから、決めていたこと。
俺はお嬢の為に身体を張って、剣となって戦い、楯となって死ぬことを厭わない。
お嬢の為に殺すことも、死ぬことも恐れない。
「次の魔王はお前だな!勇者の名にかけて、その血を絶やす為にお前を倒す!」
安いセリフを叫びながら部屋に飛び込んできた自称勇者は、こっちサイドから見たら悪役だなんてことにはこれっぽっちも気付かない。
「我々の次期当主は戦いを望んでいない」
どうか和平を――。
だがその言葉を、自称勇者は耳に届く前にゴミ屑のように蹴っ飛ばして捨てた。
迫りくる大剣の一振りから放たれた、電撃のような一撃。
お嬢の避難を最優先――、と、思った矢先。
視界が3回転、いや4回転?
「魔法は封じた!お前たちに勝ち目はない!」
猫型に戻った身体は、あっさりと衝撃に飛ばされ壁に叩きつけられる。
「ジン!」
「逃げろ、馬鹿ッ!」
駆け寄るお嬢、襲い来る次の一撃――、迎撃の手段がないならば、この身を張るまで。
命に代えて、世界で一番尊いモノを、守る。
俺の――、俺ごときの、生命で。
ああ、俺は弱い。
最期の時はこんなにも呆気なく、無力――。
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