愛のままにわがままに

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「ジン――……、逝かないで……ッ!」 ――…… ――、 ああ。 雨、だ。 死んだはずの俺を、お嬢が呼んでいる。 降り注ぐのは血の雨、ではなくて。 お嬢の、涙。 ここは【雨降り地区】――、か。 「逝かないで!死なないで!嫌だああぁぁぁー――……ッ!」 泣くな。 言ってたじゃないか。 俺のためになんか、泣いてやらないって。 暗い、暗い闇の中で、絶えることのない冷たい雨が、身体を濡らす。 死んで尚俺を苦しめる事実――、【雨降り地区】に飛ばされた俺は 所詮、お前のペットだったか――。 「違う……ッ!ジンはペットなんかじゃない……!」 そう、かな。 じゃあなんで、俺はここにいるんだ。 いいんだ、もう。 解放してやる。 もう、苦しまなくていいから。 お前の心に嵌めた枷を、外すよ。 これからは、自由に……。 障害の無い、幸せな、恋を。 だからもう、泣くな。 「愛、してる、の――……」 降りしきる雨の中届いた、お嬢の叫ぶような気持ちが。 死んでる場合じゃない、と。 くたばりかけた俺の身体を、魂を、叩き起こした。 お前が泣くなら 死ぬわけに、いかない。 お前だけを 他の何に代えても、傷つけない。
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