愛のままにわがままに

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「……夢、……か?」 腕の中で眠る、大切な人の目元が濡れている。 泣いた……? どこからが、夢だったか。 そして、部屋中に漂う血の匂いは一体? 「ジン……」 小さく寝言を呟いたお嬢の頬にそっと唇を落とし、そこに残る涙の痕跡を優しく舐めとる。 愛している。 お前だけを、決して傷つけない。 もう二度と泣かせない。 他の何を、破壊しても。 薄暗い部屋の窓の外、雲間から覗いた月光が差し込む。 部屋中に漂う血の匂いは、何だ? あの壁際に転がる、黒い塊は、一体何だ? 「ジン」 もう一度はっきりと、お嬢が俺を呼んだ。 その手が俺の頬に伸びて、何かを確認するように輪郭をなぞった。 「愛してる」 ――もう何も迷わない。 今だから。 好きだから。 お嬢。 俺の声が聞こえる? もっと近くへ来て。 このままずっと、2人だけで。 イケるところまでイこう。 堕ちるところまで堕ちよう。 ただ、この愛のままに。 俺は、お前だけを。
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