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「急用。また連絡する」
郁斗……もう、もう……またはないんだ。
あたしの質問を答えているうちに、郁斗は身支 度をして、携帯を自分のポケットに入れた。
「じゃあな」
「うん。さようなら……」
あたしの声は、彼の出て行った扉の音に掻き消 された。
あたしの声だけが、一人寂しく響いた。
今の声、郁斗に聞こえたかな?
涙は出なかった。
ただ、寂しさだけが残る。
あたしは、自分の携帯を取り出し、郁斗宛に メールを打つ。
たった5文字。
『さようなら』
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