失う

5/6

593人が本棚に入れています
本棚に追加
/96ページ
「急用。また連絡する」 郁斗……もう、もう……またはないんだ。 あたしの質問を答えているうちに、郁斗は身支 度をして、携帯を自分のポケットに入れた。 「じゃあな」 「うん。さようなら……」 あたしの声は、彼の出て行った扉の音に掻き消 された。 あたしの声だけが、一人寂しく響いた。 今の声、郁斗に聞こえたかな? 涙は出なかった。 ただ、寂しさだけが残る。 あたしは、自分の携帯を取り出し、郁斗宛に メールを打つ。 たった5文字。 『さようなら』
/96ページ

最初のコメントを投稿しよう!

593人が本棚に入れています
本棚に追加