君と見た空

126/194
前へ
/194ページ
次へ
今日は翠ちゃんが 出てくるはずなんだけど 朝、小児科でのミーティングに彼女の姿はなくて やっぱり…まだ具合よくないのかな なんて考えながら診察室に入ると ガチャ…━ 『おはようございます …霧生先生 先日は送って頂いてありがとうございました …ご迷惑おかけして… すみませんでした』 カルテを両手一杯に抱えて ぺこり…と頭を下げる 翠ちゃん 顔色もよさそうで …安心した 『おはよ もう…大丈夫そうだね 朝のミーティングにはいなかったけど… どうしたの?』 『…あ…すみません… 永瀬さんの所にお礼に行ってたんです ミーティングの内容は 先にチェックさせて貰ってたので大丈夫です』 ニッコリ笑って いつもの珈琲の準備をしてくれる彼女は普段通りで 『それならよかった でも…病み上がりだから あんまり無理しないでよね 君が倒れたら 僕が迷惑なんだから』 『……… …はい…すみません… 気を付けます…』 少しだけ落ち込んだような顔でうつ向いて 消えそうな声で謝るから きっと… 【迷惑】を素直に受け取っちゃったのかな また…僕の冗談に ひっかかってる いつまでも俯いて黙ってる翠ちゃん 仕方がないなぁ…もう 『…冗談…真に受けないの』 『…っ…!!!』 うつ向いた顎に 指を掛けて 上を向かせると 唇を噛み締めた彼女は 顔を真っ赤にして 迷ったような瞳をクルクル揺らして ……そんな瞳で… 見ないでよ… 堪らなくなって 思わず抱き締めてしまいそうになった瞬間 君が …今にも泣き出しそうな でも 少しだけ笑みを含んだ顔を上げて …呟いた 『…霧生さん…の …ばか…意地悪… 霧生さんなんて…っ… …大嫌い…』
/194ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3786人が本棚に入れています
本棚に追加