君と見た空

132/194
前へ
/194ページ
次へ
『なんだ…純 …悩み事か? 俺でよければ何でも聞くぞ?』 カウンター越しから 熱燗と御通しを出して 山谷さんが心配そうに声を掛けてきてくれる 『悩んでる時は 冷えたビールよりも 温まる熱燗がいいんだぞ 俺の勝手な解釈だがな』 『はい…ありがとうございます 僕もそう思います』 『そうか!! 純もそう思うか!!』 嬉しそうな山谷さんの顔に 僕の気持ちも少しづつ落ち着いてきて 一口飲んだ 辛口の日本酒は グッ…と喉を刺激した ふぅ… 次第に頭の中がクリアになってくる 僕は… 翠ちゃんを行かせたくなかった どうしても…行かせたくなくて 抱き締めてしまった あんな目で見られたら 我慢…できなかったんだ 彼女の気持ちも…立場も …佐々木も 一瞬…全てを忘れて ただ…離したくなかった 【行かせたくない】 なんて 思わず口に出してしまったけど あんな半端な言葉じゃ ちゃんと伝わらなかったよね 僕の気持ち 昔と同じ… 兄のような存在としての 只の独占欲に聞こえたとしてもおかしくない …言ってしまえばよかった 例え 私は佐々木の彼女だ と答えた 君の言葉が変わらなかったとしても 他の誰よりも君の事が大事だと 言えば…よかった 君の… 僕を見る瞳は 確かに僕を想ってくれてたはずだったから
/194ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3787人が本棚に入れています
本棚に追加