君と見た空

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『フラれちゃいました』 ……えっ…ちょ… フラれた…って? 『それ…どういうこと?』 『佐々木さんには… ずっと…忘れられない方がいたんです その方に昨夜 偶然会って 彼女も佐々木さんを忘れられなかったって』 …偶然… そんな事があるなんて 翠ちゃんの話振りを聞いてると 彼女は 佐々木にそういう女性がいたことを既に知っていた でも 翠ちゃんの顔は… なぜかスッキリしている 『…佐々木さんにね 正直になって貰ったんです 彼女さんは泣いてるし 佐々木さんも苦しそうだし… 一番大事な人は 私じゃないですよねって』 なんで… 君は自分からそんな事…? 『そんな事言って 自分から引くなんて… じゃあ… 君はどうなるのさ』 『…そう…ですけど だって… 佐々木さんも彼女さんも お互いが一番大事な人ってわかっているのに 別れるなんて…ダメじゃないですか 私は… よかったって思ってます ほんとに大事な人と一緒になってくれたって…』 柔らかい微笑みを見せた翠ちゃんの瞳に 僕が映る 『…私も… 正直に生きたいの 大事な人を…偽るのは苦しいから』 ……っ… 揺れる瞳と 噛み締めた唇から 君の気持ちが…見えた ……っっ… 『…っ…霧生…さ…っ?!』 引き寄せた腰 あと数センチで触れそうなお互いの唇の距離 君が… 誰のモノでもなくなったのなら もう…我慢も遠慮もしない …唇の距離が限りなく ゼロに近くなる 翠ちゃんの目は 僕を写し込んだまま 『…拒まないって事は そういう事…って 受け取るけど…いい?』 返事の代わりに 小さく頷いた君が ゆっくり瞳を閉じた …やっと…戻ってきたね おかえり…翠
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