君と見た空

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『えっ…』 業者の顔から 笑顔が消える 『…あの…』 『だから、いらない 他で買うから』 『…えっと… どこよりもお安くご提供いたしますと… 言わせて戴いたはずですが… 他に何か不都合でも…?』 不都合? 不都合だらけでしょ 意味がわからないって顔で言葉を失ってる業者の姿に 翠ちゃんは首を傾げて 『霧生先生…? どうしたんですか? サンプル…気に入りませんでした?』 『ん?サンプルは気に入ったよ だから他のメーカーから買わせてもらう むしろ 気に入らなかったのは… そこの君』 業者の男性は 突然名指しされて 目は動揺してる 『…え…っ… 私…ですか?』 『君さ… ここに何しにきたの? この子口説く為? 女漁りに来るような業者 うちにはいらないんだけど』 男は翠ちゃんを チラッ…と見ながら バツの悪そうな顔 やっぱり…ね …悠太の言ってた事 間違いないみたいだね 『とにかく 今後一斎、君の所とは取り引きしないから よく覚えておくことだね 安易に人の物に手を出したら 取り返しのつかない事になるかもしれない…ってね』 『…人の物…? え…っ…?あ……』 翠ちゃんを見る僕の目に漸く意味を理解したのか この世の終りかと思うような顔で 頭を下げた後 ドアから出ていった この後上司になんて報告するんだろ うちとの取り引きが終了した…なんて言ったら クビ…かもね 仕方ないんだよ…? 君が翠ちゃんに手を出したんだから この場で直接 上司に報告しなかっただけでも 有りがたいと思ってほしいな 『…先生…? さっきの話って…』 『…口説かれてたんだって?』 『…え…? …………あ… …見てたんですか!?』 『…悠太がね』 『なんでもないですよ!? 食事のお誘いもちゃんと断ったし 好きな人が… …います… って…』 好きな人… そう言う翠ちゃんは 少しだけ照れ臭そうに 視線を逸らした そんな可愛い顔されたら… 怒れないじゃない
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