君と見た空

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━24━ 『…これでよし』 ナースステーションの時計が 定時を示して 引き継ぎも終わったし 後は着替えて帰るだけ 今夜は霧生さんの家に行くって約束 一度家に帰ってから… って思ってたのに 『翠ちゃん 早くしないと置いて行くよ』 …え…っ ナースステーションのカウンター越しから 霧生先生がひょっこり顔を覗かせて 車のキーを弄びながら そんな堂々と…っ!! これから二人で帰ります そう宣言してるみたいで 恥ずかしいんですけど!! 『うわぁ…っ やっぱりあの噂本当だったんですね!!』 …あの噂…? 『水木さんと霧生先生 付き合ってるらしいって!!』 ……っ!! もうそんな情報が!? 『君達情報早いじゃない』 『ちょっ…先生…っ!!』 がっつり肯定しちゃってますけど!! そんな事言ったら…っ 『あー… これでショックを受ける子がどのくらいいるかな…』 『かなりいるよね』 ……やっぱりそうだよね そんな事 わかってたはずなのに いざ 看護師達からはっきり聞いてしまうと 少し胸が痛い 『…余計な話してないで 君達は仕事に戻りなよ そろそろ巡回の時間でしょ』 『あ…っ!!そうでした!! すみません、今行きます』 霧生先生の言葉で 看護師達も慌てて仕事に戻って行く 『…すみません…先生』 『…僕は君との関係隠すつもりはないからね 例えそれで誰がどう思おうと』 彼の瞳から強い意思みたいなのを感じて それは… “君は僕のもの" そう言ってくれた霧生先生の気持ちが 身に染みて伝わってくる 『霧生先生は変わらないですね そうやって いつも私の一番欲しい言葉をくれます』 『当たり前じゃない』 そんな 自信たっぷり 口角をクイッ…と上げた笑顔 私はこの笑顔が 昔から大好きだった
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