君と見た空

151/194

3784人が本棚に入れています
本棚に追加
/194ページ
蘭ちゃんが 定食の卵焼きを一口 口に入れながら 小首を傾げて 『…ん?何…』 『翠ちゃんって なんで看護師になったの?』 なんで…か 『うーん… 昔…憧れの看護師さんがいたから…かな』 『憧れの看護師さんって?』 『うん…私ね 昔、身体が弱くて… しょっちゅう入退院繰り返してたの 病院内なんて 目を閉じてても歩けるくらい』 『えー…目を閉じてても? そんなに?』 そう… そのくらい入院ばっかりしてた 『その時の担当看護師さんがね… 優しくて、素敵で 私も将来あんな風になりたいな…って』 学校よりも多く病院にいたんじゃないかってくらい そんなだったから その看護師さんが 誰よりも鮮明に記憶に残っている 『…そんなに難しい病気だったの?』 遠慮がちに聞いてくる蘭ちゃんに そうだよね… そんな事言えば …気になるよね 『…ん… 心臓がね…悪かったの』 『…心臓…?』 益々心配そうな顔させちゃった 『あ…でも完治したから 今は大丈夫!!』 『ほんと? それならよかった…っ』 昔の事なんて 初めて人に言ったかも 入院ばっかりして 心臓の手術を繰り返した過去は あまりにも暗い話だったから 人には極力言わなかったんだけど ほら… 実際…蘭ちゃんの目に 涙が浮かんでる 『もー…蘭ちゃん泣かないでよー… もう大丈夫なんだから』 コクコク頷いて よかった…と笑う うん…私も今 こうして生きていられる事 こんな風に泣いてくれる友達がいる事 心から愛する人がいる事… 本当によかった…って …思うよ
/194ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3784人が本棚に入れています
本棚に追加