君と見た空

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━25━ プルルル…プルルル… 小児科の診察室に 内線の音 『来たんじゃない? 定期健診の順番』 霧生先生がクルリと振り返って 鳴り響く電話を指差した 『出ます…っ』 ガチャ…━ 『はいっ…小児科水木です』 案の定 電話の内容は定期健診の順番のお知らせ 『先生、すみません 少し時間貰いますね』 『うん、いいよ 行っておいで …あ…』 ………? 『少し顔色良くないみたいだから よく診てもらってきなよ?』 顔色…良くないかな 先生の心配そうな顔に ちょっと…嬉しかったり 『ありがとうございます でも…大丈夫ですから すぐに戻ります』 部屋を出た後 ドアを背に一息付く 本当は… 少し前から胸の辺りに 息苦しさを感じて それを先生が 気付いていたかはわからないけど 大きく深呼吸を二つ …うん…大丈夫 もう何ともない 早く健診受けて戻って来ないと この後も仕事は山積みなんだから 頭の中では 警鐘が鳴っている この身体の状態は 普通じゃ…ないかも …って もしかして…って 昔…言われた 10年以内に再発の可能性がある もし再発したら… 命の危険性も免れない そして… 今年…その…10年目 現実から目を背けちゃいけないって…わかってる わかってるけど…っ まだ…気付かない振り していたいの …今…幸せだから
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