君と見た空

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『…さて…翠さん 先日倒れてから 何か気になる事は…ありませんか?』 内科の診察室に入るなり 南先生の問診が始まった 気になる事… それは…きっと 南先生には 隠せない 採血の結果はまだ出ないと思うけど 心電図の結果は回されてきてる そして 問診票を見れば 一目瞭然の 急激に減った…体重 『…最近…疲れやすくて 食欲が…ありません』 『…後は…?』 『……………』 『…他にもおありでしょう…? 私に隠し通せると… お思いですか?』 先生は 眼鏡を指で押し上げて もう一度… 念を押すように私の顔を 覗き込む 『…胸の辺りに 違和感が…あります たまに…ですが 呼吸が…苦しくなったり 動悸がしたり…』 『それは…先日倒れた時から…ですね?』 南先生の的確な答えに 黙って頷くしかない 『…心辺りはありますか?』 心辺り… 先生はわかってる 私も… 『…幼い頃から心臓が悪くて… 10年前に心臓の手術をしています』 『…そうでしたか 10年前…と言うと 学生の頃…ですね』 『…はい その時のドクターには 10年以内に再発があれば…』 あれば… ………………… その先は…言わなくても 南先生なら… わかるよね… 『…今年…10年目ですか』 『…はい』 先生は大きく息を吐いて 目を閉じた カチカチ…と響く時計の音と 廊下から聞こえる 無数の足音 暫くの沈黙の後 南先生が ゆっくり目を開いて スッ…と私の肩に手を置いた 『精密検査をしましょう 全てはそれからです ただ どんな結果が出ようと うちには敏腕外科医が揃っていますから 全力で対応させて頂きますよ』 『…はい… 宜しくお願いします』 この期に及んで 絶対大丈夫…なんて言えないのはわかってるけど せめて 大丈夫な振りだけは していたい でないと… 自分の運命 恨んじゃいそうだから
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