君と見た空

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【幸せでいたかったの】 昨夜…そう話す翠ちゃんの瞳には 堪えて溜まった涙が揺れていた 口に出してしまったら 現実から逃げられない そんな風に思ってたのかもしれない いくら再発を覚悟してても …死…に対しては 目を背けたかった 看護師として ある程度の知識があるからこそ 大体の予想がついてしまう それはドクターも同じで 病状や検査結果を見れば その病気がどれだけ深刻かが… わかってしまう 今回の翠ちゃんのケースもそう 来週の 精密検査が終わる頃には 大きな局面に 立たされているはず オペが可能な状態か否か 生か…… 死…か …………… 前にふと…考えた 医療技術は著しく向上しているけど どうしても越えられない壁は 実際存在する 助からない患者も 数え切れない程…見てきた その都度思った どうにもできない 仕方ない事も…ある でも 僕の愛する人が もし…同じような状況になっても 僕は納得できるのかな… 諦められる…? 考えてみたけど あの時は結局… 答えが見付からなかった 今…実際 その状況に直面して ドクターとして 頭で理解しようとしても 心が付いていかない 君を失うかもしれない? そんなの納得できるはずないじゃない 君を死なせるなんて そんな事 絶対にさせない 絶対に…
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