君と見た空

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病気が発覚してから ずっと…考えてた 霧生さんと付き合ってていいのか いずれ 死ぬかもしれない恋人と 付き合ってて 幸せなはず…ないから でも… どうしても言えなかったの 別れて…なんて 今が幸せ過ぎて 霧生さんとずっと一緒に 居たくて… だからせめて 生きてるうちだけは… 私だけを愛していてほしい 私の我が儘でしかないんだけど 命が長くないなら 最後の我が儘だと思って 聞いて欲しかった 思っていた事… やっと…言えた そう思ったのに 『…バカな事言わないの』 彼は私の鼻先を チョコン…と摘まんで 優しく睨む 『君は…もう諦めたの? 僕を一人にするつもり?』 『…だって…っ…』 『だって…じゃない 僕を置いて逝くなんて 許さない』 『…でも… この胸の痛みには 覚えがあるんです… あの頃の痛みと同じ 再発してるのは… 間違いないの…っ…』 『だとしても 僕を置いて逝かせない』 『……っっ…』 霧生さんの 真っ直ぐな瞳に それ以上…何も言えなくて 『ねぇ…翠? 君が生きたいと願うなら 僕は何だってする 必ず君を助けてみせるよ だけど 君がもし… 今から生きる事を諦めるなら 今…ここで …別れてあげる どうする…? 僕と…別れたい?』 『…っ…そんな…っ!!』 別れる…なんて…っ そんな事… 私が別れるなんて言えない事わかってて… 『別れられないでしょ?』 『…はい』 クスクス笑いながら 額をコツン…と合わせて 『だったら… 諦めないで… 生きよう? 奇跡は必ず…起こる …起こしてみせるよ』 しっかり抱き締めてくれたこの腕の温かさに 今まで生きてきた中で 一番の幸せを感じたの 生きてて…よかった…って
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