君と見た空

163/194

3784人が本棚に入れています
本棚に追加
/194ページ
食事をしながら 他愛もない話をして 終わった後は キッチンで 母と二人で片付け こんな事でも…幸せで 『…今は具合…どう?』 洗い物をしながら ポツン…と母が呟やいた 『うん…今日は大丈夫だったよ』 『…そう…それならよかった』 ………………… 『…ごめんね… 急にこんな事になって』 『…今年で10年 これを過ぎれば…って 思ってたんだけどね』 隣で俯く母の目に 光る物が見えて 心配させちゃってるのがわかる 『…うん… でもね…お母さん 私は大丈夫だよ 絶対…死なない …死ねないの 約束…したから…』 『約束…?』 『…ん…約束 その… …付き合ってる人…と…』 『付き合ってる人がいるの?』 母の顔が少しだけ明るくなる 『…うん 大学の時の先輩で… うちの病院の…ドクター』 『先輩…って… 昔から翠が よく話してた 霧生さん…だったかしら?』 お母さん…よく覚えてる 『そう…霧生さん 彼とね…約束したの 絶対…諦めない…って』 『…そう…そうなの… じゃあ…大丈夫ね』 “大丈夫” 本当は 大丈夫…なんて 言えない それは 両親も…私も… きっと霧生さんも… …わかってる わかってて… それでも…大丈夫って言わないと 心が負けてしまいそうだから 『…まだお前を嫁にはやれないぞ』 ………っ…?! リビングで黙って話を聞いていた父の声 『…嫁…って!! 何言ってんのお父さん!!』 『もう…お父さんったら そんな事言って 翠が行き遅れたら そっちの方が困るじゃない』 ……は…!? 『いや…嫁にはやらない』 『私は翠の花嫁姿見たいわ』 二人とも…何の話を!? 『…ねぇ…翠 困ったお父さんね』 ふ…と私を見上げる母 ソファ越しに振り返る父 笑ってる二人の目には 涙がいっぱい お父さん…お母さん 必ず…生きて 親孝行…するからね
/194ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3784人が本棚に入れています
本棚に追加