君と見た空

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『明日の検査の予定…なんだけ…ど…』 明日からの検査に備えて 幾つかの要点を纏めた予定表 担当看護師から受け取って僕が持っていくから…と 翠ちゃんの部屋を訪ねた 入るよ… 声をかけて部屋を開けると 振り向いた君の顔から伺ええたのは 『…泣いてたの…?』 『…いえ…っ… たまたま欠伸が出ただけです…っ…』 『…にしては目の周り…赤いよ?』 『…ぁ…っ…』 必死に取り繕う嘘は 見事な程空回り もう… 『相変わらず君は嘘が下手だね 君は… 僕がいないとすぐに泣いてしまうから…』 ベットサイドに座って ゆっくり肩を抱き寄せると コテン… 僕の肩に乗せた 君の頭の重みが心地好い 鼻先を掠める柔らかい髪に口付けを落とす 『…泣いてもいいよ』 『……え…っ』 『…そのかわり 君が泣いていいのは 僕の腕の中だけ …泣いてもいいから… 諦めちゃだめ』 『……っ…』 頭を撫でて 幼い子をあやすように 背中をポンポン…と叩きながら 『…大丈夫だよ…大丈夫』 出来るだけ優しく 刺激をしないように …暫くすると 僕の胸から小さな嗚咽が 聞こえてきた 周りに聞こえないように 声を我慢する君が 僕の心を締め付ける 『…霧生さ…ん…』 『…ん…?』 『…私を…助けて…っ ………っ… 私の…命を… 霧生さんとの幸せを… …繋ぎ止めて… おね…がい…っ…』 『……っ…!! 当たり前じゃない…っ』 僕の背中に腕を回して しがみつく翠ちゃんを 壊れてしまうんじゃないかと思うほど きつく…抱き締めた
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