君と見た空

178/194

3783人が本棚に入れています
本棚に追加
/194ページ
━30━ ピッピッピッ… 茜色に染まった病室は 心電図の音だけ響いていて ベットに横になった翠ちゃんは 呼吸の落ち着きを取り戻し、 真っ白だった頬にも 少しづつ赤みがさしてきた ドクターブルーが掛かった後 土谷さん、鮎さんが駆け付けて 病棟看護師総出の処置が行われた 後少し気付くのが遅れたら… 事態は最悪になっていたかもしれない 『霧生先生…ありがとうございました 先生が間に合わなければどうなっていたか…っ』 ご両親が何度も頭を下げる 『いえ… 僕も油断してました こんなに早く酷い発作が起こるなんて』 着実に 病状が悪化しているサイン まだ若い分 進行も速いとは思っていたけど 『こうなると… …早目のオペが必要ですね 翠ちゃんには 検査後もこのまま入院してもらって 出きるだけ早くオペをさせてもらいます』 『…わかりました』 『スケジュールの調整がありますから 早くて…来週』 『…来週…ですか』 来週… 早いよね… 心の準備を調えるには 余りにも早すぎる そんなご両親の複雑な気持ちが 痛い程伝わってきて 僕は何も言えず 眠る彼女の髪を…撫でた 『翠には… 先程お願いした通り 先生から言ってあげてください その方がいいと思うので…』 『…わかりました』 翠ちゃん… 僕が今まで生きてきた中で これ程時間が止まればいいのに…って 思った事…なかったよ このまま時間が止まれば 君はずっと僕の側で 確実に…生きているのに
/194ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3783人が本棚に入れています
本棚に追加