君と見た空

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『…翠…いますか』 ……? ドアの開いた音と 遠慮がちな声 振り向くと 『…紗和ちゃん…』 今にも泣き出しそうな顔で紗和ちゃんが立っていた 『霧生…翠はどうなんだよ』 その後ろからは矢田の姿も見えて 『…一昨日 鮎川さんから連絡貰っていたんです 翠が検査入院してるって でも…っ… さっき電話が来て…っ』 目の前の翠ちゃんに 言葉を詰まらせて 目には涙を浮かべて 『うん…ちょっと厄介でね 君達だから言うけど 来週…オペになると思う 病名は…一応守秘義務があるから』 『…そんなに急いでオペをしないといけないなんて…』 紗和ちゃんも矢田も 看護師だから 大体の察しは…ついてるよね 『鮎川さんからは 【翠の具合がよくないから 出きるだけ早く行ってやってくれ… もしかしてオペが必要になるかもしれないから】 って… それって…っ オペをしたら翠はどうなっちゃうんですか!! オペをすることで どうにかなっちゃうって事ですかっ!? ねぇっ… 霧生さん…っ…!!』 『紗和…っ… 落ち着けって…』 矢田に宥められながらも 必死な紗和ちゃんに 僕が言える範囲で伝えられるのは 『…例えどんなに困難なオペでも必ず… 成功させてみせるよ』 『……っ ほんとに…っ…!? 大丈夫なんですよね!? 私…っ… こんな状態の翠と会うのが最後…だなんて 絶対嫌ですから…っ!!』 紗和ちゃんは 矢田に抱えられて 暫くその場で泣き崩れていた 『…霧生… さっきここに来るとき 中津にも声かけたんだけどさ… 【元気な翠じゃなきゃ会いにいかねぇから】 って…あいつ… 霧生が必ずなんとかするはずだって』 紗和ちゃんの背中を撫でながら 苦笑いを浮かべて 拳を一つ 僕に突き出した 『お前を信じてるから』 …っ…全く… 学生じゃあるまいし そんな青臭い真似しないでよ 柄にもなく 胸が…熱くなるじゃない 『…任せて』 部屋を出ていく二人を見送りながら 色んな思いが胸に渦巻いて 思わず天を仰いだ
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