君と見た空

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『…霧生さん… 検査の結果…聞かせてください』 離れた唇から聞こえた 翠ちゃんの言葉に 僕は一つ息を吐いて 僕の手を握り締める彼女の手をとって 唇を付けた 『…虚血性心筋症』 一瞬…翠ちゃんの肩がピクンと揺れた 看護師なら… わかってしまう どんな病気か…が 『…そう…ですか …虚血性心筋症って 合併症を起こしてるんですよね… じゃあ…心カテは無理…』 専門知識があるからこそ 深刻な事態を把握できてしまう 同時にオペが必要な事も 『今回の発作は 進行が早まってるサインだと思う だから君は このまま入院して 出きるだけ早くオペをすることになるけど いいよね…?』 『…わかりました どのみちオペが必要なのは変わらないですから 霧生先生にお任せします 左心室形成術…ですか?』 『…うん』 『あは…は… 成功率…低いですねっ』 ……っ…!! 無理に作り笑いをして 目に涙を溜める君を 僕は思わず抱き締めた 『…それでも…っ 必ず君を…助けるよ 助けて…あげるから』 『……っ… …はい…っ…』 僕の背中に回された 弱々しい腕が 必死にしがみついて 『…霧生さん… …私…っ 我が儘かもしれない…っ』 ………え 『…死ぬ事が …怖い…っ… …まだ…っ… 死にたく…ない…っ…』 ………っ!! 涙を詰まらせた声 病気がわかってから 一度だって口にした事がなかった言葉 僕の肩に止めどなく落ちているのは きっと…君の涙 『…大丈夫… 僕を信じて…? 君を絶対… 死なせやしないから』 腕の中で何度も頷く君を 精一杯の想いを込めて …抱き締めた
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