君と見た空

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『…おっ!! 純じゃないか!! 久しぶりだなぁ…っ』 『…ご無沙汰してて すみません』 山谷さんの笑顔に やっぱり来て良かったって思う 奥のテーブル席に座って 一通りの注文を済ませると 土谷さんが一つ 息をついた 『…翠の様子はどうだ?』 『…そう…ですね 今は落ち着いています 酷い発作もあの日以来ないですし 軽い発作は今朝もあったようですけど…』 『…微熱もつづいてたな』 ああ…今日は悠太が担当してたって言ってたっけ 『…で… 今回のオペだけどよ 過去に純の扱ったケースで似たようなモンはあったのか?』 『…うん… アメリカにいたとき 左心室形成術は経験してる サポートで一回と 執刀で五回 だけど… どっちも再発のケースには当てはまらない』 『…そうか… 土谷さんはどうだ?』 『俺も何回か経験があるっていやあるが… 再発の患者じゃなかった』 『…俺も似たようなモンだ』 左心室形成術はよくあるけど 再発のパターンは あまり事例がない 一気に心臓移植っていうケースは この病院で中心的に行われてるから よくあるんだけど 運ばれてきたビールで 喉を潤すけど …味なんてしなくて ただ…今は このオペをどう対処していくか 頭の中は 翠ちゃんの顔が 笑顔が 離れなくて… 誰より大事な君の命を …運命を 僕が…握っている 『…純…』 ………? 『…あんたは 自分の思うようにオペを執刀したらいい それを成功に繋げるのは 俺達…周りの役目 自分を…周りを信じろ』 それまで黙って聞いていた遠藤くんが そんな言葉を掛けて ふ…っ…と頬を緩めた …自分を…周りを… ………… そう…だよね 何のためのプロジェクトチーム? ここで魅せないで どこで魅せるんだって話 …うん、やれる 『…僕の持っている知識と技術 全てを出して執刀しますから サポートを… お願いします』 君の事 思い出になんて…させないから
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