君と見た空

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『まーた こんな所にいやがったのか』 『…鮎さん』 『…今日もよく晴れてるな』 眩しそうに見上げた空は 青く澄んだ… 雲一つない青空で 『もう…一年経つんだな …翠がオペしてから』 『…そうですね』 こんな空を見ると 今でも思い出す 君と誓った…あの日の事を 『…ってことは 俺達がアメリカに来て半年が経った…って事か』 感慨深げに話す鮎さんは 一年前の事を思い出してるのか 空を見上げた目は遠く 日本を見ているようで 僕もつられて 空を見上げた ここから見る空も 日本で見る空も変わらない 変わらないから この空はいつも 僕の胸を…熱くするんだ 『…でも… お前の派遣期間はそろそろ終わりだろ? 俺はあと半年残っているが』 『今月いっぱいですよ』 来月には日本に帰国する 鮎さんは一年契約だからあと半年 ほんとは僕が一年だったんだけど… 【俺が代わってやるよ】 僕を気遣ってくれたんだと思う この人は… 昔からそうだから 後輩に好かれるのもわかるよね 『…おっ…そういや 昨日佐々木から連絡あっただろ』 『うん、結婚するんだってね 左之さんも式には呼ばれてるんでしょ?』 『…ああ… その時は一時帰国するつもりだ』 『…そうか…じゃあ…』 【あ…っ…いたいた!! ドクター霧生!! 日本からいつもの国際電話です!!】 僕を呼びにきたナースが 嬉しそうに 手で電話のジェスチャー “いつもの 日本からの国際電話" その言葉で 電話の相手に覚えがある僕は 自然に顔が綻む 『早く帰ってやらねぇとな?』 『…はい』 そう…君が待ってる 翠と… 君の身体に宿った …もう一つの小さな命 僕らを支えてくれた 全ての人達が 起こしてくれた奇跡は 今…確かに 二人で願った幸せな未来へと紡がれている 必ず生きる…と 誓いを立てたあの日の空を 僕達は一生…忘れない ━完━
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