君と見た空

21/194

3783人が本棚に入れています
本棚に追加
/194ページ
『じゃあ、おっきなお口 開けられる? うんっ…上手 あー…少し喉が赤いかなぁ… はい…いいよ、終り 頑張ったね』 泣きそうな子供の頭を撫でながら 霧生先生は白衣のポケットから いつものアレを出した 『頑張ったご褒美ね』 小さな子供の手に握らせたのは お菓子を型どった消ゴム 『今日は何のお菓子かな?』 私がそっと 子供の顔を覗き込むと 涙を浮かべたまま ゆっくり手の平を開いて 『シュークリーム!!』 弾けるような笑顔を見せた 『わぁっ…良かったねぇ』 横にいたお母さんも 子供の笑顔に ふっ…と表情が緩んで 『いつもありがとうございます… ほら…先生にありがとうは?』 『純せんせ、ありがと!!』 『いーえ、どういたしまして お母さん、お子さんね 少し風邪が悪戯して 喉に炎症が起きてますので風邪薬の他に 抗生剤出しておきますね 三日間、しっかり飲ませてあげてくださいね すぐに治るはずですから』 『はい、ありがとうございました』 『せんせ、またねー』 『またね、じゃないでしょ? こんな所、出きるだけ来ちゃダメ』 診察室が笑いに包まれて …こんな掛け合いが 毎日繰り広げられる小児科は 結構好きだ 『…次は?…あ… 先月喘息で入院した子だね… また出ちゃったのかぁ… 翠ちゃん? この子、先にレントゲン撮って貰ってきて』 『はい…じゃあ今、混んでないか放射線科に連絡してみます まだ3歳ですし すぐに撮れないようなら 先に診察しておいた方がいいと思うので…』 『そうだね、お願い』 『はい』 放射線科の番号は… 『はい、放射線科です』 ハキハキした明るい声が耳に響く 『あ…蘭ちゃん? 今から単純でいいんだけど… 気管支の写真撮って貰いたいの すぐに撮れるかな?』 『翠ちゃん? って事は小児科? んー…後二人患者さんがいるけど どっちも単純一枚づつだから大丈夫だと思う いいよ、連れてきて』 『わかった、ありがとう すぐに行ってもらうね』 カチャ… 受話器を置くと同時に 後ろから ククッ…って笑い声が聞こえた ……?
/194ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3783人が本棚に入れています
本棚に追加