君と見た空

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『もうすっかり慣れたみたいだね? 明日で一ヶ月だっけ? 翠ちゃんが来てから』 『…あ…はい そう…ですね… もう一ヶ月……』 壁に掛かったカレンダーを見ながら 考えてみたらこの一ヶ月 ゆっくり振り返る時間なんてなかった ドクターや看護師の名前 定期通院患者の名前と 病名… ほぼ毎日残業しながら ナースステーションに入り浸って 必死で頭に詰め込んだ 我ながらよくやったと思う 『じゃあ…頑張った君に ご褒美…あげようかな?』 ……? そう言いながら 白衣のポケットを探り出した霧生先生 『はい、ご褒美』 手渡されたのは 桜餅の消ゴム 可愛い…っ!! けど あれ…? 私、子供と同じレベル!? まぁ…そんなもんか 無意識に溜め息が漏れて もう一度 手のひらの消ゴムを眺めた …ん…? 何…これ 消ゴムについてる 小さな紙切れ 開いてみると 【今夜七時 職員玄関の前 約束のステーキ食べに行こうか】 ……っ…!! 思わず霧生先生を見ると デスクに肘をかけて 頬杖をついたまま にやり…と笑みを浮かべて 『…どうする?』 なんて聞くから 『…奢りですか?』 咄嗟に口をついて出たのはこの言葉 色気もくそもないけど 『この一ヶ月 頑張ったご褒美だからね いいよ、奢ってあげる そのかわり』 …交換条件ですか 『……なんでしょう…?』 『翠ちゃんができる 一番のお洒落してきて?』 …………は? なんで…? 『それ、霧生先生に なんのメリットがあるんでしょう…?』 『そんなの決まってるじゃない 一番可愛い君を見られるのがメリットだよ?』 ………はい? 『…そのような価値はないんですが… 最高級のステーキに申し訳ないです… …って…あ…っ まさか…っ… メチャメチャ安いステーキだとか…? 霧生先生酷いです…っ』 最高級のステーキって 約束したのにっ!! 『…なに言ってんのさ ちゃんと最高級ステーキ 奢ってあげるよ? 僕はただ 翠ちゃんの可愛い姿を 独り占めで見たいだけ』 …な…っ… ちょっ… そんな恥ずかしいこと… 言わないでよ ドキドキしちゃうじゃない… 霧生先生の…ばかっ
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