君と見た空

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我ながら悪趣味だと思う 他の人と約束なんて 最初からしていない 予約の電話は 翠ちゃんと約束した後 昼休みにしたもので 昨日…なんて嘘 なんであんなこと口走ったのか 自分でもわからないけど 一瞬だけ ほんの一瞬だけだけど 君の笑顔が消えたような気がした 僕は何を期待していたんだろう “酷いです”って怒る姿? “やっぱりそうだったんですか?”って笑う姿? それとも “私の為じゃなかったんですか” って 落ち込む姿…? 翠ちゃんに意地悪するのは いつもの事だって 君はわかってると思うけど 僕の事 もっと罵ってくれたらよかったのに 何も言わずに 平気な顔で元の笑顔を見せる翠ちゃんを見てたら ホントの事を言えなくなってしまって 結局 翠ちゃんの為に予約したお店は 君にとって “誰かの代わり” になってしまった この間 鮎さんに言われた 翠ちゃんを “一人の女として” あの言葉が 何故か胸に残ってるんだ タクシーに乗り込んだ後 隣に座った翠ちゃんは 窓の外の 流れる雪をただ 黙って見つめていた 怒ってる訳でもなく 笑ってる訳でもなく 君の表情から伺えるのは 少しだけ 寂しそうな… そんな横顔だった
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