君と見た空

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運ばれてきた料理に 目を輝かせて 食べていいですかっ? なんて まるで子供みたいにウズウズしちゃって 『どーぞ?』 お皿を差し出してあげれば パクッ… 『ん~…っ!! 美味しいっこれっ… 先生!! 美味しいです!!』 『よかったね 好きなだけ食べていいからね』 満面の笑みで 遠慮なく食べる姿は 学生の頃 よく二人でファミレスで 夜通し語り明かした事を思い出した 勉強の話 サークルの話 たまには恋の話もしたっけ 【かっこいい人見付けたんですけど どこの学部かわからないんですっ】 【ふーん...僕とどっちがかっこいい?】 【そりゃ 霧生さんの方がかっこいいに決まってるじゃないですか】 って笑いながら 騒ぎすぎて店員さんに怒られたりした 『…霧生先生?』 『…え…』 『…どうかしました? …あ…私、食べ過ぎですかね』 慌ててナイフとフォークを置いて 僕の顔を伺うように クルクルと瞳を揺らして 『ううん… 何でもないよ? 気にしなくていいから いっぱい食べなよ …あ…』 『……?』 『病院の外では“先生”はいらないでしょ? 昔みたいに“霧生さん”でいいよ』 『……はいっ…!!』 嬉しそうに笑う翠ちゃんに 僕も自然と頬が緩んだ 『あ…霧生さん いい忘れてたんですけど』 モグモグと口を動かしながら 水を口に流し込んで 少し苦しそうに 息を吐く翠ちゃん 全く...落ち着いて食べないから… …口に入れすぎだってば 『蘭ちゃんが、誤飲の患者さん 写真に異物は見付かりませんでした…って伝えてくださいって』 『ああ…昼間のあの男の子? じゃあ知らないうちに 出たんだね よかった』 『そういえば… たまにサークルに顔出してる? 良さんがまだ現役で講師してるって聞いたけど』 良さんは 弓道サークルの講師 優しいけど どの講師よりも練習が厳しくて でも暖かい人柄で 皆に好かれていた 『私、昨年一度行ってみたんですけど 良さん、まだまだ元気でやってましたよ? 霧生さんもたまには行ってみたらどうですか? 良さん喜びますよ?』 『そうだね…全然行ってないからな… じゃあ…今度の休みに 二人で行ってみようか 久々に弓持ちたいし 翠ちゃん、僕と対戦してみる?』 『はいっ…臨むところです!!』 『そんなに意気込んで… 後で泣いても知らないよ? 手加減しないからね?』 『…う…っ…』
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