君と見た空

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そんな話をしながら 料理も半分を過ぎた頃 《失礼します ワインをお持ちしました》 店員が頼んでいたワインを持ってきた 『ワイン…ですか? なんだか…高そうな…』 『…そうだね 安くはない…かな』 僕が頼んだこれ 何かの記念日にだけ頼む 特別なワイン 今日は翠ちゃんを連れてきた記念日だから 『霧生様がこちらをオーダーなさるのは 久しぶりですね』 『うん… 昨年…こっちに帰国した時以来かな 難しいオペが成功した後に遠藤君と飲んだんだっけ』 『そんなワイン 今日開けてもいいんですか?』 『もちろん 翠ちゃんが頑張ったご褒美…だからね』 『だって…それは...』 『...昼間 急にこのワインをご用意してほしい…って仰られた時は正直焦りましたが… ご用意できてよかったです』 …ちょっ… 『………昼間?』 ああ…ばれちゃった 『……昨日…じゃなかったんですか?』 『昨日…じゃなかったみたいだね』 『…それはどういう…?』 『…うーん… 他の人と約束なんて してなかった…って事かな』 翠ちゃんの瞳が 大きく見開く 『なんでそんな嘘…っ!?』 僕自身も なんであんな嘘 言ってしまったかわからない でも もし…鮎さんが言った事が 本当なら 『もしかしたら… 翠が ヤキモチ妬いてくれると思ったから…かな』 『ヤキモチ…?』 なんで…? そんな顔で 小首を傾げて僕を見詰めるから 『今日の服… よく似合ってるよ? 可愛いね、翠ちゃん』 『…そんな事ばっかり!!』 プイッ…と僕から視線を逸らす君が 少しだけ恥ずかしそうに …笑った 僕らは これ以上にも これ以下にも ならない…きっと
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