君と見た空

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━5━ 『翠ちゃん 午後の患者さんはこれで終わり?』 『はい、今の患者さんで最後です 霧生先生昨夜当直だったし今日は早く帰れそうですね?』 …コトン 彼女が淹れてきてくれた珈琲が 僕のデスクの周りに香ばしい香りを漂わせる 『うん、今日は早く帰らせて貰うよ 昨夜も殆ど寝てないんだよね』 『…あ… さっき悠太君も言ってました 交通事故が三件続いた…って』 『…そう 昨日は雪が降っていたからね スピード出しすぎで滑った車が事故って…ってケースが三件 その内二件はオペに入ったし 鮎さんも土谷さんも 呼び出されて来たからね』 全員 幸い命は取りとめた 一人、無理かもしれない…って 一瞬思った患者がいたけど 土谷さんが上手く対応してくれて 完璧な処置ができた 『…大変でしたね じゃ…特に遠藤さんなんて 休む暇なかったんじゃないですか?』 『遠藤君は昨夜 ずっとオペ室にいたんじゃないかなぁ…』 そろそろ時計の針が 定刻を指そうとした頃 トントン━ ……? ガチャ… 『純 ちょっといいか』 あれ…噂をすれば 『なんです?土谷さん 僕、今日はさすがに定時で帰らせて貰いますよ?』 『ああ…好きにしろ 後、明日の学会だが… うちの病院から出席するのは俺とお前だけだから 俺の車で行く いいな』 そうだ… 明日は学会があるんだっけ 『わかりましたよ 土谷さんと車の中で二人きりなんて 息が詰まってしまいそうですけど』 『…歩いて行くか?』
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