君と見た空

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………鮎…さん? 翠ちゃんの携帯に電話したら 周りから確かに鮎さんの声が聞こえた 『霧生…先生?』 『…うん 君…今、どこ?』 『どこ…って… えっ…と…山谷さんのお店…? 霧生先生こそ…どうかしたんですか…?』 なんか口調もおぼつかない お酒かなり入ってる…? 『別に用事があった訳じゃないけど ふーん… 鮎さんが一緒なんだ?』 『はい… 悠太…君もいますけど…?』 『…酔ってるの?』 『…多少…』 多少…ね 【純か? …俺が代わるよ】 鮎さんの声が聞こえて 『純か? 翠、ちょっと酔っちまってるからよ これからタクシーで帰すから 心配すんな』 ………………… 『…鮎さんが送ってあげたらいいじゃない』 『いや…自分で帰れるって言ってるし大丈夫だろ ……… …なんだ? もしかして… ヤキモチでも妬いてんのか?』 は?ヤキモチ…? なんで僕が? 『バカな事言わないでくださいよ 僕は別に…』 『…ならいいけどよ とにかく 翠はすぐに帰らせる 心配いらねぇよ …本人に代わるぜ』 心配なんて… 『…もしもし… 霧生…先生? 私…何かしましたか…ね』 『…してないけど? 翠ちゃん、お酒あんまり強くないのに 少し調子に乗りすぎじゃない?』 『…え…っ…あ…の』 『僕、学会で疲れてるからもう切るよ おやすみ』 ブツッ…ツーツー… ……なんだろう… このモヤモヤ 翠ちゃんの声も 鮎さんの声も 聞きたくなかった 本当は 一日中学会で さすがに疲れて 急に翠ちゃんの声が聞きたくなって ホテルに着いてすぐに 電話をした でも そこには予想もしなかった鮎さんや悠太がいて 更に酔った声の翠ちゃんに …なんかイラッ…としたんだ 『…はぁっ…』 バフッ… ベットに寝転んで 何もない天井を見上げながら また あの鮎さんの言葉が頭に過る 【翠を一人の女として…】 僕は…何をしたいんだろう
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