君と見た空

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『…あ…ヤバ… もうこんな時間』 朝から掃除と洗濯を済ませて のんびりしながら 部屋でゴロゴロして ふと時計を見上げると 紗和と約束していた時間まで あと二時間 電車の時間を計算すると …うわっ… もう準備しないと間に合わなくなる…っ!? 飲んでいた紅茶を シンクに投げ込んで 急いで着替えて メイクに取りかかった なんとか予定の電車に乗り込んで 三本先の駅で待ち合わせ 改札を出ると 懐かしい顔を見つけて 思わず小走りで駆け寄った 『紗和…っ!!』 『翠~久しぶり!!』 二年ぶりに会う紗和は 全く変わってなくて 『元気ー? 今、どこの病院にいるの?』 『今ね、風見総合病院 院長が若いんだけど めちゃくちゃ我が儘御曹司でさ…』 『あ~…あそこね あそこの院長 確かうちの土谷先生の同期じゃなかった?』 『そうそう 土谷さんと同期 ……ってか 今、うちの…って言った?』 『うん、一緒の病院』 『…霧生さんも?』 『うん』 『えーっ!! なんでなんで!? まさか他にもOB一緒とか?』 紗和の声が 駅の改札に響く 『紗和…声でかい ほら…詳しい事は お店に行ったらゆっくり話すから』 キャンキャン喚く紗和を引っ張って 目的のお店を目指して歩いていると 『お~… 紗和と翠じゃん』 ……誰…? 微かに聞き覚えのある声に振り向くと 数人の先輩達が手を振って近づいてきた 『わあ…っ… 佐々木さんに矢田さん 中津さんも~』 『お前ら… 相変わらず変わってねーな ま…少しは女らしくなったか』 『少しは…って何ですか!! こんなに女性らしくなったじゃないですか!!』 またも街の中に響く 紗和の憤る声 『だぁぁぁ~うるせぇ』 『声でけーよ』 こんなやり取り 昔は毎日で 楽しくて仕方なかったあの頃を思い出した 『いいから…早く店に行こーぜ』 呆れたように 頭を掻きながら歩き出した佐々木さんを ゾロゾロと皆で追いかけながら 何年経っても変わらないっていいな…なんて しみじみ感じてしまった
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