君と見た空

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━12━ 居酒屋に集まった久しぶりの面々に 所々から 笑い声や騒ぎ声が聞こえる 皆、お酒も進んで 程よく落ち着きを取り戻した頃 ツンツン… 僕の服を引っ張る隣に座る女の子 『…お久しぶりです 霧生さん』 『…久しぶりだね 葉瑠ちゃん』 にっこり笑う彼女は 学生時代 短い間だったけど 付き合ってた元カノ 確か…アメリカに行くまで付き合ってたと思う …よく覚えてないけど 『元気そうですね…』 『うん…お陰様で 君は? 今、何してるの?』 『今は…高校の養護教諭です 霧生さんの噂は聞いていますよ? 敏腕外科医って』 小首を傾げて 上目使いで僕を見上げて この子のよくする仕草 『敏腕かは別として… まぁ…目的の外科医にはなれたかな』 手にしたビールを一口 …目を逸らした 葉瑠ちゃんのこれ 最後まで あまり好きになれなかったんだよね クスクス… …………? 『霧生さんって… 私には昔からいつも そんな態度』 『…そうだったかな』 『…そうですよ …翠さんとは大違い どっちが彼女かわからなかったもん』 少しだけ唇を尖らせて 拗ねたように見せる けど 『翠ちゃんは特別 君と付き合う時 そう宣言したはずだけど?』 『確かにそうでしたね でも… 結局私は我慢…できなかった 【妹】に嫉妬したんです あの…空港で』 ふ…と 彼女の視線は 離れた翠ちゃんに向けられて その目からは 好意的なものが感じられなかった 『霧生さん…』 ……? 『私の時間は まだ… あの頃のままで止まってます』 …あの頃のままって… あれから何年経ったと… 『…霧生さんがアメリカに行く直前 別れ話承諾したけど… 結局忘れられなかった… ずっと…ずっと憧れてた 霧生さんの彼女に やっとなれたのに…って… 昨年霧生さんが帰国したって聞いて…っ 会いたくて…っ 会いたく…て…っ 私…っ やっぱり今でも… 霧生さんが…っ …好き…』 …すがるような目 冗談じゃ…ないみたいだね
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