君と見た空

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『あ~…霧生さん あっちに座っちゃったね』 紗和が残念そうに溜め息をついた 『うん、せっかく席とってたのに… まあ…仕方ないよね あの通り人気だし?』 『だって…っ… 霧生さんって言ったら 翠じゃない!!』 『ぷっ…なにそれ』 カクテルの氷をつつきながら興奮気味の紗和に ククッ…って笑う矢田さん 『…まあ…な 霧生っていやぁ… 翠を連想させるよな あの空港で…』 …あ~… やっぱりソレ…言われちゃう…? 『行っちゃ嫌ですっ!! …ってな』 中津さんも楽しそうに 私の頭をワシャワシャとなで回す 『もう…っ…言わないでくださいっ… そんな昔の事…っ!!』 恥ずかしいったらない 子供みたいに泣きわめいたあの姿 皆忘れてくれない… 『ありゃ…霧生の彼女も 平静ではいられなかっただろーな』 『霧生のヤツ 困った顔しながら お前が可愛くて仕方ねぇ…ってツラ… 隠しきれてなかったもんな』 ………え。 今…彼女…って… 『あの…霧生さんの彼女って…?』 『…ん…? お前知らなかった? あん時 霧生の彼女空港にいたんだぜ?』 嘘… 霧生さんの彼女が あの場にいた…!? 『まあ… 霧生がお前の事を可愛がるのは 仕方ねぇって諦めてたけどな …あいつも』 あいつも…と言う矢田さんの視線の先には 霧生さんの隣に座る 確か… 私より一つ下の…女の子 まさか…あの場に 彼女がいたなんて その少し前に彼女がいたのは知ってたけど 確か…別れたし あの当時は 特定の彼女はいないって 言ってたのに…っ!! あれを彼女が見ていたなら… 絶対…嫌なはずだ 私…嫌われてたんだろーなぁ… 『…翠ー? そんなに気にしないでいーんじゃない? 大体霧生さんって どの彼女も長く続かなかったし 翠とだって お互い恋愛対照じゃなかったんだし』 『だよな お前ら完全に性別無視してたもんな』 『…紗和~…中津さーん~… もう…忘れましょ…? 忘れてください…』 今更ながら自己嫌悪 時間が経ちすぎて なんの弁解も仕様がない ううう~… なんだかいたたまれなくなって 手にしたグラスを 一気に煽る 喉が…熱い 『なぁ…翠 お前…霧生の事… 今も恋愛対照じゃねーの?』 『…え…っ…』 振り向くと ほほ杖をついた佐々木さんの真っ直ぐな目に 一瞬… 言葉が…出なかった
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