君と見た空

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『…何してんの?』 『霧生…』 『霧生さん…っ…』 目の前の光景に 大体の意図は察した こんな場面で声をかけるなんて 邪道だとは思ったけど 振り向いた翠ちゃんが 一瞬…泣きそうな顔を見せて また俯いたから 『佐々木…? ちょっと翠ちゃん借りていい?』 『…ああ…』 迷ったように瞳を揺らす 翠ちゃんの腕を掴んだ 『…行くよ』 歩き出そうとした時 『翠 これ…後で連絡して』 佐々木が差し出した紙 アドレス…なんだと思う 翠ちゃんは 黙ったままそれを受け取って 小さく頷いた ………… 僕は…何をしてるんだろう このまま佐々木と翠ちゃんが一緒にいたら 翠ちゃんは佐々木の告白を受けてしまう そんな気がして 咄嗟に二人を離す事しか 頭になかった みっともないよね 『…霧生…さん…』 『…………』 『…私…どうしたら… いいですか…ね』 ……それを…僕に聞くの? ……………… …ああ…そうか やっぱり… 君にとって僕は なんでも相談できる 兄のような存在…なんだね なんだ… もしかして…なんて 一瞬でも期待した僕が …バカみたいじゃない 『…そう…だね 君の好きにしたら? …佐々木の手を借りて 少しは女の子らしくなるのも …いいんじゃない?』 『…っ…!!』 潤ませた大きな瞳を見開いて 唇を噛み締めた君が 僕を見上げた そんな目で…見ないでよ 前言撤回…しそうになる 『…そう…ですね…』 空を見上げて 涙を堪える翠ちゃんと 掴んだ手を離した僕の間に 肌を刺すような冷たい風が吹き抜ける このまま 時間が止まれば 君はまだ 誰のものでも…ないのに
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