君と見た空

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『霧生さん!! あれ…っ!! あれ歌って下さい!!』 『あ~!! 私も聞きたい!!』 マイクをもった女の子達が霧生さんにマイクを差し出す 皆の言う“あれ” 霧生さんが昔… よく歌ったラブバラード 私も聞きたい… けど 今は 霧生さんの横に行って いつものようにせがむ事が…できない 霧生さんの横には… フワフワのパーマがよく似合う 元カノ… 二人の雰囲気が なんとなく…いい感じなのは きっと 気のせいじゃない 『あ~… 僕…今、風邪気味だから 悪いけどパスするよ』 周りからは えーっ!! なんてブーイングが出てるけど ニッコリ笑って 手を左右に振った …今日は…飲もう めちゃくちゃ飲んで… 全部忘れよう 周りに数種類のカクテルを並べて 端から順番に飲み干していく 『翠!!大丈夫~?』 『大丈夫だよ~ あと二つでコンプだから!!』 『おい…っ…翠!! 何やってんだよ…っ… そのくらいにしとけ!!』 手にしようとしたグラスが宙に舞う 『…鮎川さん…うっさい…』 『うっさい…じゃねぇよ …っ…たく 大して飲めもしねぇくせに無茶しやがって… 純!! どこにいる!?』 霧生…さん? ちょっ…霧生さん呼ぶのは… やめて…っ 『…ここにいますけど』 『こいつ…連れて帰ってやれ お前なら家…わかるだろ』 霧生さんがゆっくり近づいてくる 『…待ってください!! 大丈夫ですから!! 一人で帰れますから…っ!!』 『…大丈夫じゃないでしょ… 送って行くよ ほら…立って?』 手を引かれて 立たせられた私は 無意識に元カノの顔を見てしまう こっちを見ている彼女に 霧生さんが笑いかけた 『帰ったら連絡するから 待ってて?』 ……っ… ああ…そういうことか… 元カノとヨリを…戻したんだ そんなこと…わかっていて このまま送ってもらうなんて… できるはず…ない 私は霧生さんに掴まれた手を そっと外して 精一杯…笑った 『…妹は…もう 卒業しなきゃ…ね? いつまでも甘えてばっかり…いられないから』 私… 上手く笑えてたかな
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