君と見た空

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━13━ 『…ここで下ろして貰えませんか?』 店からタクシーを頼んで 自宅まで向かっていたんだけど 途中… 大学近くの駅を通りかかって 思わず…タクシーを止めた まだそんなに遅い時間じゃないから 人通りもあって 昔… ここをよく歩いたな…なんて 懐かしささえ感じる道を ふらふら 宛もなく歩いてみた 今は…ただ 気持ち…落ち着けなきゃ… 霧生さんの事 好き…って認めなければ 今まで通りの関係が続くと思ってた 霧生さんに彼女ができても何も変わらないと…思ってた でも そうじゃない 霧生さんに恋愛感情を持ってしまった時から もう… 【妹】ではいられなくなってたんだ 彼女…っていう存在に嫉妬して 霧生さんの【妹】としての特別じゃ…満足できない でも 彼にしてみたら 私は昔からずっと… …妹 【どうしたらいいですか…?】 なんて聞いてしまったのは 心の何処かで期待していたのかも…しれない いつものように “君は僕のものだから” そう言ってくれるんじゃないか…って 『…ばかみたい…』 鼻の奥がツン…として 思わず空を見上げた …もう…前に進まなきゃ 気になってるのは ポケットの中にある 紙… 佐々木さんから貰ったアドレス …電話… してみようかな… プルルル…プルルル… 耳に響く携帯の音が やけに長く感じる 『…もしもし?』 『…えっ…と… 佐々木さん…ですか…』 『…翠?』 『…はい…あの…っ…』 『…お前…今、どこ? 外…騒がしいみたいだけど』 『…大学の近くの… 駅の…コンビニの…近くを曲がった所…』 『…どこだよ…』 『…だって…なんて言ったらいいか…』 『…まさか…お前また一人でいるんじゃねーだろーな…』 『…一人です…けど』 『…はぁ~っ…お前は… ったく… これから行くから待ってろ!! そこから絶対動くんじゃねーぞ!!』 プツッ…ツーツー… 『…えっ…ええっ…』 ちょっ… これから来るって…っ どうしよ…
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