君と見た空

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ガチャ…バタンッ━ 『純!!』 早朝の医局に 鮎さんの声が響き渡る …やっぱりね 朝一番で来ると思ったよ 『…おはようございます 鮎さん』 『おはようございます …じゃねぇ!! ありゃ一体どういう事だ!!』 『…あれ…ってなんです?』 『…惚けてんじゃねぇよ… お前…本気か? 本気で葉瑠とヨリ戻したのか…って事だよ!!』 鮎さんの手が 僕の肩に強く食い込む 相当…怒ってるね 『…そうだって言ったら?』 『…翠はどうすんだ』 『…葉瑠ちゃんは…彼女 翠ちゃんは…妹 最も…卒業間近のね だから何の問題ないですよね? 僕だってそろそろ… 妹離れしないと いつまでも彼女できないじゃない』 『…もう一度聞く お前…本気で言ってんのか? それで…本当にいいと… 思ってんのかよ』 鮎さんの言いたいことは…わかる 翠ちゃんへの気持ちを僕よりも先に気付いてたのは 鮎さんだから 『…本気ですよ 何度聞かれても…』 同じです それに…』 『それに…なんだ?』 『翠ちゃんには 佐々木がいますから』 『…はぁっ!? 翠と佐々木…って… なんだぁそりゃ… どうなってんだ…お前ら…』 何でこんな風になってしまったのか…なんて わからないよ 僕も翠ちゃんも OB会の前は予想もしなかったよね でも…きっと 遅かれ早かれ こうなる事は決まっていたのかもしれない だって 『僕は…翠ちゃんにとって 兄のような存在以上にはなれなかった…って事なんですよ』 『んなこと…っ…』 僕の言葉に 何かを言いたそうな そんな顔 一度…開きかけた口を継ぐんだ 『わかった… お前がそこまで言うならもう…何も言わねぇ ただ… 後で後悔しても知らねぇぜ?』 『…余計な心配は無用です 後悔なんて…しませんよ』 『…っ…勝手にしろ!!』 ━バタンッ…━ …ガチャ… 『…一体どうしたんです? 何やら 鮎川君の様子がおかしかったようですが…』 入れ違いに入ってきた南さんが ドアの方を見ながら 首を傾げた 『…なんでもないですよ』 僕達の進む道が ただ… たまたま別々だっただけの話… でしょ…?
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