3人が本棚に入れています
本棚に追加
/47ページ
第三話。(雨降りの午後)
蛇原さん達と扉の外に出れば、僕が最初店に行った時とは違う場所に出た。
どうやら此処は何処かの廃工場らしく、窓や入口らしき物は壊されたのか、それとも雨や風で風化したのか、全て割れて嘗て(かつて)の面影はまるで無い。
「何処かの工場・・なのかな?」
「そうねぇ・・見る限り何かを製造してたように見えるけど・・こう言う場所って好きな人が見たら堪らないんでしょ?」
「あぁ・・・廃墟マニアか・・」
「ばう?」
「あら山ちゃんは知らないかしら?こんな廃れた場所や建物が好きな連中のことをそう呼ぶの。私もこんな場所は好きよー?」
身を隠せる最高の場所じゃない!!とウキウキした様子で語る蛇原さん。
あぁ成程・・・蛇原さんにとってはそう言う意味か。
廃墟は獲物を待ち構える場所にも、雨風を凌ぐ場所にも、動物達にとっては様々な用途で使える場所になるようだ。
確かに、と頷く山田さんは飼い犬なのでそんな心配は無いようだが、やはり少しは気持ちが分かるようで蛇原さんの言葉に同意している。
「まぁでも・・・蛇原さんの体を隠すならこれ位無いと隠せないか・・」
「そうよー?私みたいに大きくなると先ず身を隠せる場所を探すことから始めなきゃならないし、案外大変なのよねぇ・・」
まぁ最悪、人の姿になって適当な場所で過ごすんだけど。と付け加えた蛇原さんは割と野生生活を満喫しているらしい。
ほら行くわよ。と先を歩く山田さんに置いて行かれないように蛇原さんと共に僕は街へ向かって行った・・・。
最初のコメントを投稿しよう!