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そんなこんなで、五月に入った。
特に変化のない、平凡な日々。
ただ、ひとつだけ異端なことがあるとすれば、
「今日は先生が先か。今日の弁当の中身は何だ?」
「残念。今日は購買のイチゴミルクパンだよ」
「何なんだその胸焼けするネーミングは」
「俺に言うな。これは俺の親衛隊の子が差し入れしてくれたんだよ。」
昼は屋上で、鈴之助と食べるのが日課になっていることだった。
鈴之助は仕事の関係でよく授業を休む。生徒会には入っていないが学年主席であるため、授業免除が適用されているらしい。
「…たかが高校生が仕事だなんだと、大変なご時世だこと」
「有栖先生…発言がオヤジ臭いぞ」
俺にとって鈴之助は友達みたいなもので、昼飯の時間は癒しのひと時と言っても過言ではなかった。
そんなある日のこと。
「有栖せんせー、生徒会顧問の先生がこれを有栖せんせーに渡してくれってさー」
教室に入れば、桐島が言った。
その手には、何かの資料。
「…面倒ごとじゃねーだろうな」
「そんなこと俺に言われても困るよ~」
桐島から資料を受け取ると、流し読みした。
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